新築の一戸建て住宅の計画の中での音楽室。お客さまは以前から楽器を演奏され、せっかく家を作るのだから、楽器を気兼ねなく演奏する部屋をつくりたい!とのご要望。一部屋を音楽スタジオとしてつくりました。音響的に工夫をこらすことだけを目的とせず「近隣へ音がもれることで苦情などにつながるのは避ける」(気を遣って演奏ができなくなるようにはしない)「家族(家の中)に対しては多少聞こえることはよしとする」という方針で計画した音楽室です。
防音には重さ。地階RCの箱に入れる。
お引渡少し前、まだドアが取付けられる前の状態。
敷地が40坪弱の一般的な住宅地にたつ地上木造2階建ての家。木造の部分で音楽室をつくる場合は、音を完全に防ぐのために非常に複雑な工事を伴います。そこで今回はコストはかかりますが、一部屋分、その音楽室だけを丸々地下に埋込みました。構造体のコンクリートをつくることは、他の構造・方法に比べてコストがUPしますが、その分音の面では安心できます。それほど重要でない部分は工夫してコストをなるべくかけないようにしました。RC(鉄筋コンクリート)で大方の心配はなくなりますので、あとはその地下の箱に穴をあけた、外と通じる部分(具体的には、ドアと換気扇ダクトの穴)に気を使いました。
防音の二重ドア
まず出入口のドアですが、二重の防音ドアにしています。ドアは吸音材・防音シートを挟んで、厚めの板でサンドイッチした構造、中央にはめ込まれたガラスも厚めの10mm厚のガラスを入れています。またレバーハンドルには、閉めた時に、気密パッキンの付いた枠にドアを押し付ける、グレモン錠という金物を使用しています。細長い中央のガラスはない方がいいようにも感じますが、やはり中から外の気配がわかるようにしたいのと、万が一お子さんたちが入った場合に閉じ込められることのないよう、また電気の消し忘れなどがないようにとの配慮です。
天井の詳細
天井は細い桟を規則的に細かく並べたスノコ状の天井。この桟は天井の下地材(野縁)を軽くカンナをかけただけのもの。これを防振のパッキンを介して吊っています。天井と壁とはくっつけずに隙間をとっており、コンクリートの構造体に音の振動をなるべく伝えないようにしています。天井の裏には吸音用にポリエステルの綿(断熱材)が充填されて、音を吸収するようにしました。
この他、地下室ですので給排気式の換気扇を設置しています。中間に防音チャンバーを挟むことで音の漏れを少なくしています。実際は演奏しててもほとんど換気フードから音は漏れていないようです。
最終仕上げはDIY
ドラムの練習セットが置かれた状態。お客様がカーペットを敷き、いくつかのモノが入って音は気にならなくなりました。
実は立方体に近い部屋の形は、音響的にはあまりよくないようです…。 当初の何もない、コンクリートが打ち上がっただけの状態の時は、人の話し声だけで音がキンキンに響いて、とても人がいられる状態ではありませんでした。その後、客様がカーペットを敷いたり、いくつかのモノが入ることで、音は気にならなくなりました。片隅には、余った断熱材のグラスウールを布でくるんだものを壁に立て掛けてありました。これも吸音材としてかなり効いているようです。
ドラムの演奏がメイン、ということで床の振動の処理に配慮しました。床は高密度のグラスウールを二重に敷き、その上に抑えのコンクリートを打設、さらにその上に構造用の合板を貼って床をつくっています。周囲の壁とは1cm程度の隙間をあけシーリング処理。ここでも振動を周囲の壁に伝えない作りにしています。
壁の隅に付けられた木材は、設計者とお客様とで現場の廃材の中から使えるものを選んでとって置いたものです。お客様のDIY。これでだいぶ良い感じで演奏ができるそうです。
建物 DATA
北習志野の家
KN-House
木造2階,地下1階
敷地面積 :123.53 m2(37.36坪)
建築面積 :59.76 m2(18.08坪)
延床面積 :107.55 m2(32.53坪)
設計:大庭建築設計事務所 /大庭 明典
構造:安藤建築事務所 /安藤 美樹
ルーフバルコニー、吹抜
地下室、音楽スタジオ
外壁:ガルバリウム鋼板角波
屋根:ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き
床:カバフローリング壁:シナ合板+オスモウッドワックス
天井:米松合板
撮影:大庭明典
設計・監理
大庭建築設計事務所 一級建築士事務所
URL:http://www5a.biglobe.ne.jp/~obw/
住所:153-0061東京都目黒区中目黒2-7-11宮岸ビル4F
電話:03-5721-2822 FAX:03-3716-8459
E-mail:[email protected]
お引渡少し前、まだドアが取付けられる前の状態。
敷地が40坪弱の一般的な住宅地にたつ地上木造2階建ての家。木造の部分で音楽室をつくる場合は、音を完全に防ぐのために非常に複雑な工事を伴います。そこで今回はコストはかかりますが、一部屋分、その音楽室だけを丸々地下に埋込みました。構造体のコンクリートをつくることは、他の構造・方法に比べてコストがUPしますが、その分音の面では安心できます。それほど重要でない部分は工夫してコストをなるべくかけないようにしました。RC(鉄筋コンクリート)で大方の心配はなくなりますので、あとはその地下の箱に穴をあけた、外と通じる部分(具体的には、ドアと換気扇ダクトの穴)に気を使いました。
防音の二重ドア
まず出入口のドアですが、二重の防音ドアにしています。ドアは吸音材・防音シートを挟んで、厚めの板でサンドイッチした構造、中央にはめ込まれたガラスも厚めの10mm厚のガラスを入れています。またレバーハンドルには、閉めた時に、気密パッキンの付いた枠にドアを押し付ける、グレモン錠という金物を使用しています。細長い中央のガラスはない方がいいようにも感じますが、やはり中から外の気配がわかるようにしたいのと、万が一お子さんたちが入った場合に閉じ込められることのないよう、また電気の消し忘れなどがないようにとの配慮です。
天井の詳細
天井は細い桟を規則的に細かく並べたスノコ状の天井。この桟は天井の下地材(野縁)を軽くカンナをかけただけのもの。これを防振のパッキンを介して吊っています。天井と壁とはくっつけずに隙間をとっており、コンクリートの構造体に音の振動をなるべく伝えないようにしています。天井の裏には吸音用にポリエステルの綿(断熱材)が充填されて、音を吸収するようにしました。
この他、地下室ですので給排気式の換気扇を設置しています。中間に防音チャンバーを挟むことで音の漏れを少なくしています。実際は演奏しててもほとんど換気フードから音は漏れていないようです。
ドラムの練習セットが置かれた状態。お客様がカーペットを敷き、いくつかのモノが入って音は気にならなくなりました。
実は立方体に近い部屋の形は、音響的にはあまりよくないようです…。 当初の何もない、コンクリートが打ち上がっただけの状態の時は、人の話し声だけで音がキンキンに響いて、とても人がいられる状態ではありませんでした。その後、客様がカーペットを敷いたり、いくつかのモノが入ることで、音は気にならなくなりました。片隅には、余った断熱材のグラスウールを布でくるんだものを壁に立て掛けてありました。これも吸音材としてかなり効いているようです。
ドラムの演奏がメイン、ということで床の振動の処理に配慮しました。床は高密度のグラスウールを二重に敷き、その上に抑えのコンクリートを打設、さらにその上に構造用の合板を貼って床をつくっています。周囲の壁とは1cm程度の隙間をあけシーリング処理。ここでも振動を周囲の壁に伝えない作りにしています。
壁の隅に付けられた木材は、設計者とお客様とで現場の廃材の中から使えるものを選んでとって置いたものです。お客様のDIY。これでだいぶ良い感じで演奏ができるそうです。
北習志野の家
KN-House
木造2階,地下1階
敷地面積 :123.53 m2(37.36坪)
建築面積 :59.76 m2(18.08坪)
延床面積 :107.55 m2(32.53坪)
設計:大庭建築設計事務所 /大庭 明典
構造:安藤建築事務所 /安藤 美樹
ルーフバルコニー、吹抜
地下室、音楽スタジオ
外壁:ガルバリウム鋼板角波
屋根:ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き
床:カバフローリング壁:シナ合板+オスモウッドワックス
天井:米松合板
撮影:大庭明典
大庭建築設計事務所 一級建築士事務所
URL:http://www5a.biglobe.ne.jp/~obw/
住所:153-0061東京都目黒区中目黒2-7-11宮岸ビル4F
電話:03-5721-2822 FAX:03-3716-8459
E-mail:[email protected]
コツ・ポイント
演奏する楽器、周辺の状況や家族との関係などから、どの程度の仕上がりにするのか、という点を良く話し合い、仕様を決められると良いかと思います。コストをかければ、マンションの中にでも一部屋を入れ子のようにして防音室をつくる方法もあるようですが、専用スタジオではなく、あくまで住宅の中でです。いくつか日常生活との妥協点もあってよいのかなと思います。